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言葉に写真を添える


星野道夫さんと言う写真家の写真を見てみなさい。


カメラをぶら下げて歩く私は、あちこちでそう言われる事があった。
けれど、なかなかその写真家の写真に出会えることがなかった。
それからしばらくたって、帰国した私は地元の市役所に行った。
市役所の一角に、星野道夫さんの写真が展示されていた。
星野さんと私は、偶然にも同じ町に住んでいたようだった。
やっと出会えた写真をみた感想は、「風景写真かぁ」っと言う程度で感動はなかった。

そして先月の沖縄でのこと。
事故を起こして、怪我して、仕事ができなくて暇になった私は寮の近くの図書館へ。
そこでまた星野さんの写真集を探し、写真をひとつひとつ眺めてみたが
風景や動物写真にあまり興味がない私には、やっぱり感動するほどのことではなかった。

「星野道夫は文章も素晴らしい。」 と言う話を友達に聞いていたので、
写真集の後ろの方にある、写真についての解説文章を読んでみた。
びっくりするくらいその文章に引き込まれた。
解説で、短い文章であるのにも関わらず、
自然、人、動物、全てに対する深い愛と敬意があった。
そして、文章を読んだ後、また写真を見てみる。

すると、驚くことに、同じ写真なのにまったく違う写真のように見える。
星野さんの言葉で温かさを帯びた風景や動物が生き生きと輝いて
心のなかにすっと入ってきた。
さっきは何も感じなかった写真で、感動したのだ。

その感覚は衝撃的だった。

それ以来、星野道夫という人物が気になって仕方がなく、
彼の本を読んでみた。
やっぱり、素敵な人だなっと思った。

もうこの世にいないけど、まだ生きてるような気がする。
彼の言葉が生きて私の心に届いたからかもしれない。

当たり前のことを、ただ当たり前に言うだけ。
でもその言葉を発する人物に、どれだけの経験、敬意や尊敬の念、愛があるかで、
人の心への届き方が全く違う。
っと、素晴らしい人に出会う度に思う。

そんな事を思う今日この頃。



言葉に写真を添える_e0115305_332440.jpg



この写真は仏陀の生誕地、ルンビニに咲く花。
灰色にそまる殺伐とした景色の中に、ひっそりと色を添えて
参拝に訪れる人々を迎えていた。


あぁ、私もいつか素敵な言葉をもてるようになりたいな。
by atsuko-sunaoni | 2010-09-29 03:29 | ネパールでの出会い
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